2020年からの新型コロナ感染症により、人々の生活に様々な変化をもたらしている。同時に不動産市場に大きな影響を与えている。この十数年が推進されてきている「都市化」によるニーズが消え、不動産の全面上昇に幕を引き、同時に出生人口の劇的な減少により、不動産投資に大きな転換点を迎えている。
これからの不動産投資はどうしたら良いか?多くの投資家が考えている問題である。アジアにおいて経済が最も発達している日本は、1980年代の不動産バブルを経験し、そしてバブル崩壊後、20年近くの市場調整を過ぎ、2010年以降は新たに著しく成長を見せた。1000年の都―京都は人口のスケールで東京を凌駕することがないが、スケールの小さな京都という町こそ、東京にない投資ロジックや人口減少時代のモデルづくりに最適な場所である。
数回にわたって、人口動態や投資市場の細分及び新しいビジネスモデルの創出の視点から人口減少時代における不動産投資の経験と事例を紹介していきたい。
コラム1 人口動態と不動産投資
人口の増加は不動産市場に大きなニーズをもたらしてきた。人口動態は不動産投資に大きな影響を与えることは周知のとおりである。今回は京都の人口動態変数を分析して、これからの投資のヒントとなる。
1.日本最大の「学生のまち」
京都市の総人口は約145万人(2022年1月1日時点)であり、2005年からすでに人口減少に転じている。しかし、京都市の人口推移を調べてみると学生人口の割合は総人口の10%以上を占めていることが分かった(図1)。
また、人口に占める学生の割合はダントツ日本1位であり、約東京の2倍である。(図2及び図3)
従って、昔から地元の投資家は学生専用の賃貸マンションに投資することが多かった。賃貸住宅における学生マンションの投資は収益が安定し、かつキャッシュフローを作りやすいなど様々なメリットがある。
図1-京都市の学生数の推移
(「京都市における人口動態の概要」平成27年1月)
図2、図3ー人口に占める学生の割合
(図2)
(図3)
2.世界で最も人気な「観光のまち」
平安時代は唐朝の影響を大きく受け、長安を模して造られたと言われる。今日でも京都のことを地元の人は「上洛」、「洛中」、「洛外」という愛称で呼ばれるほど唐文化の色彩が溢れている。
英国旅行雑誌「Wanderlust」で2020年に世界1位。「Travel+Leisure」は9年連続ベスト10入りとなった。京都市への観光客数は国内外合わせて年間約5300万人以上(2019年)、ユネスコの世界遺産が17カ所もある世界的にも有数の観光都市である。
図4-京都市への年間観光客数
唯一減少した年は2008年の金融危機の時であった。しかし、2012年に観光ビザが緩和されて以降は再び爆発的に増加した。
図5-2012年以降の京都市中心部(中京区)の公示地価
大量の観光客により、民泊やホテルの建設ラッシュを引き起こし、商業地だけでなく、住宅用地も高騰し始めた。
人口構成の中に、通常の定住人口と区別するため、「交流人口」の概念を導入している。観光客は典型的な交流人口である。京都に滞在する期間は長くない(平均1週間以内)が、地元の小売業や飲食、ホテルなどのサービス業に大きな成長をもたらしている。
上記の分析からすでに人口減少を直面している京都のような大都市でないまちでも、不動産投資において新たな成長戦略やセグメントを期待できる。アフターコロナ以降も日本政府が一層の推進政策及び円安の効果により、民泊やホテルなどの需要が高まり、更なる成長が伺える。